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2013第十一次瀬戸内カヤック横断隊レポート 岩野 祥子

第十一次瀬戸内カヤック横断隊レポート
岩野祥子

参加 1回目の去年は、未知の世界を見てみたい思いが強かった。 2回目の今年は、去年より一歩でも二歩でも進化したかった。

今年、自分で変わったと思ったいちばんのことは、だいぶ後ろを見られるようになったことだ。後ろを見ることは、怖くてなかなかできなかった。だけど、去年参加して以降、後ろを見ることは大切、という思いがあったので、後ろを見られるようになりたいと思いながらカヤックを漕いできた。今次隊の何日目かに、楠さんが後ろを見ることの大切さについての内田さんの言葉をあらためて伝えてくれたので、その後はなおさら意識して後ろを見ようと思った。そうしているうちに、誰がどこにいるか、分かるようになってきた。去年はついていくのに必死なあまり、最終日になっても陸上以外で誰がどれか分からないほどだったことを思うと、今年、海上で、誰がどこにいるかをおおよそ把握できたことは大きな進歩だった。

今次隊で試みたかったことは他にもあった。キャンプ生活でも漕ぐ方でも余裕を作ること。たき火とのつきあい方を変えること。去年の様子を今の自分の言葉で描写するとしたら、「生きることと、ついていくことですべてが終わっていた」という感じ。漕ぐのはもちろんつらかったけど、キャンプ生活も相当つらかった。豆はつぶれまくっていたし、手はパンパンに腫れていたし、全身の筋肉痛もひどかった。テントを張るとか、ペットボトルを開けるとか、着替えることすら苦痛だったので、今年は少しでも、どれかひとつでもいいから去年よりも楽ちんな状態を作って、去年できなかったことをやりたいと思った。結論から言うと、いろんなことが一気にとても楽ちんになって、信じられなかった。去年から今年の間に、それほどむちゃくちゃ何かを努力したわけでもなかったから、こんなんでいいのか?と思ったけど、良くなったことは素直に喜ぼう。

今年、具体的に変えたこと

1.濡れた服を着替えずに、たき火で乾かすことにした
着替えに費やしていた時間とエネルギーを他のことに回せたし、朝、濡れた服を着なくていいのは最高だった。たき火は偉大。

2.アルファ米を排除してたき火で米を炊くことにした
食べる量を自由に調整できるのがすごくよかった。15分でできるアルファ米と違って、たき火で炊くのは時間がかかる。でも思うところがあって、今年はそういう風にした。本来、生きることはそんなに簡単じゃないし手間がかかる。だいたいのことがお金で解決できてしまう時代に生まれ育ったけど、これからの時代はきっとそうはいかない。東日本大震災が起きたことで日本の状況も明らかに変わった。あれを引き金に地殻変動は活発期に入ったし、これまでみたいにうかうかしていると、これからは簡単に死ぬ。最近そういうことを考えるようになった。南極、311、被災地での活動、自分の足元の振り返り、防災への意識、野外での活動体験、このへんのことが重なり合って、今、こういう思考にたどり着いている。お金で物もサービスも便利も買う生活を送ってきたけど、自分の暮らしの中に、そうでない要素を少しずつ取り戻していきたい。たき火で米を炊いて食べることもそのひとつだった。今回、毎回わりとうまく炊けたことは、小さな自信のひとつになった。V字編隊イワシの追い込み漁は楽しかったし、釣りをしたけどフグしか釣れなかった経験や、でも亀の手を捕って食べられたことも、とてもよかった。

3.食糧とお酒の量を増やした
去年は1日2000kcalで計算して腹ペコだったので、今年は3000kcalにした。疲れると食べられなくなるので、そういう時でも食べられるものも持った。今回は初日に風邪をひいてしまい、なかなか治らず、体調はよくなかったけど、意識して食べるようにしたことで1週間を乗り切ることができた。

4.パドルを洲澤さんに作ってもらった
楽だったのはパドルのおかげが大きいと思う。自分のアリュートパドルを持てたことは大きな進化だ。

5.スマホをやめてガラケーにした
お金がかかり過ぎるのが嫌。他もろもろの理由で、横断隊の少し前にガラケーに戻していた。去年は予備バッテリーが大量だったけど、今年は携帯用の予備バッテリーを持たなかった。電池を持たすために、必要ないときは電源を切っていた。おかげで最後まで電池は持ったし、気持ちの上でとても楽だった。私が携帯に対して「必要」と考えるのは、不測の事態が起きたときの連絡手段としてだ。ただ、今次でも楠さんが海上保安庁と連絡をとってくれていたが、そういう役目を担う時に、常時携帯オフというわけにもいかないだろうと思った。その後実験し、電源を入れっぱなしでも、ガラケーなら1週間は電池が持つとわかったので、今後は予備バッテリーをひとつ用意しようと思う。

6.装備を減らした
食糧とお酒を増やす分、物を減らさないと艇に載らないこともあって、去年使わなかったものを排除。その他、小さくできるものは小さいものに変更。たとえばダウンを薄いものにして、寝袋も薄くした。ダウンは何てことなかったけど寝袋は失敗だった。初日から風邪をひいてしまったし、夜は8割がた、寒い思いをしていた。それでも今後もいろいろ実験して、自分の限界と自分にとっての適当を探っていこうと思う。

そのほか、課題とか、反省とか、次回はこうしたいなど。

・気象情報の入手について
今年は気象情報の入手には、情報を得た人に聞くという方法と、 ラジオの気象通報で天気図をとるという方法を使った。でも、「いつリーダーに指名されても対応できるように行動しろ」と言われている以上、いつでも最新の気象情報が入手できる環境は必要なわけで、今回の自分のやり方には問題があったと思う。単独行動でない状況への甘えがあったことは否めない。

・最終日のサブリーダーをふたつ返事で受けたことについて
早く寝たいあまり、前夜のミーティングでサブリーダーに指名されたとき、形式的なものだと咄嗟に判断して「いいですよ」と言った。最終日、海の状況とか、時間のこととか、隊の雰囲気とか、いろんなコトがあって、いろいろ考えながら漕いでいて、自分が今日はサブリーダーだということを急激に思い出した瞬間があった。その瞬間、猛烈に反省した。横断隊において、名目としての役割なんてないと思う。そのときの自分は、今のこの隊の状況を継続していいのか?ということを真剣に考えていた。最終日は私にとっては恐ろしい日だった。他の人が何を感じていたかはわからないけれど、私にとってはヤバイ日だったし、怖かったし、危険を感じてもいた。いろんな意味でおもしろくなかった。思い返せば、残り 2日で120km 先のゴールにたどりつくことを「あきらめない」と言ったのは、自分も含め、せいぜい 2年生までだったと思う。 5年生、6 年生は「まず難しい」と言っていた。横断隊としての行動の中で、「目的地を目指す」ことの意味。最終日、漕ぎながら、前夜に離隊した 6年生の判断について考えたし、先輩たちが「まず無理」という雰囲気だったことにも納得がいく気がした。前夜のミーティングでのやりとりもひとつひとつ思い出していた。「あきらめたくない」側にいた自分だけど、小飛島の南ですでに、行動の仕方に疑問を感じ始めていたし、佐柳ではやり方と目的地を変更すべきだと考えていた。だけどリーダーの勢いに、何も言えなかった。ただ、佐柳でいちど陸に上がりたいということは、曲げずに主張した。「あと1時間我慢できない?ギリギリなんだけど、わかってる?」と聞かれたけど、「わかってる。わかってるけど上がりたい」と伝えた。トイレに行きたいからじゃなく、自分の気持ちを立て直すために必要な上陸だった。他にも上がりたい人は必ずいるとも思った。精神的にぎりぎりだった。あんなに悶々とした気持ちで海を漕いだのは初めてだった。いい思い出ではないけれど、いろんなことを切実な思いで考えさせられた時間だったという意味では貴重な時間だったと思う。広島から本島を目指す手前で、隊長や原田さんがストップをかけてくれたときには救われた思いがした。あらためて、10年という経験値について思い知らされた日だった。

・パドリングパンツとスプレースカートについて
去年は常に全身ずぶ濡れ。今年は常に下半身ずぶ濡れ。スプレースカートとパドリングパンツが横断隊向きでないことは明らかだった。お金を投資していないので不快なのは仕方がないと思っていたけど、艇に水が入るとか、不必要に体力を消耗するとか、状況によっては「不快」だけではすまなくなることに途中から気づいた。見直していきたい。

・修理道具について
9月に知床半島を回ろうとしたとき、ひどい目にあって、修理道具を持つ大切さを学んだはずだった。横断隊の準備の最終段階で修理道具!と思い出したのに、自分でいろいろ言い訳を作って、結局何一つ持たずに参加した。今回、他の人の艇ではあるが、修理が必要になる事態になり、最終的に離隊する決断へとつながった。自分の身にふりかからなかったのはただ運がよかっただけだ。学んだことは生かしていかないと意味がない。

最後に感想です。

行く先々で迎えてくれる地元の人たちの多さと暖かさに感動しました。ここでもやっぱり、横断隊が10年積み重ねてきたこと、築き上げてきたことのすごさを思いました。横断隊は、1回1回が違うということも、2回目を経験して実感できました。今の時代に貴重な学びの場だと思います。次回はまた次回としての目標を持ちながら、シーカヤックと、隊士たちと、この国と、この星とのつきあいを続けていきたいと思います。今回も共に行動させていただきありがとうございました。これからもよろしくお願いします。
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2003年第一次瀬戸内カヤック横断隊からの記録を掲載しています。

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