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2015第十三次瀬戸内カヤック横断隊レポート 島津 裕子

第十三次瀬戸内カヤック横断隊レポート

このレポートは、横断隊に初参加した女子が、これから横断隊に参加しようかどうしようか悩んでいる人へ向けて書いたものです。海での7日間のレポートというよりは、海に出るまでのいろんな想いを書きました。海の上でいったいどんなドラマがあったかは他の隊士がそれぞれの目線で書かれていますので、是非そちらを参考に!

社会の歯車の1つとして働く者として、1週間あまりの休暇を取るハードルの高さといったら!休んでもいい?と周囲に聞くと、大抵は海外にでも行くの?とたずねられる。

私は、カヤックの海洋実習に行くと正直に話す。当たり前だか、海洋実習とは何?と必ず聞かれる。

毎年時期はおおよそ11月の下旬、瀬戸内海の山口県の祝島から香川県の小豆島のどちらかをスタートしてどちらかがゴールになる約300キロを7日間野宿しながらカヤックで海を漕ぐのだと説明する。

寒くないの?食料は?お風呂は?・・・

矢次早に質問が返ってくる

11月の下旬だからもちろん寒いし、野宿だから天候によっては寒くて凍える事もあると思う。食料は7日分を事前に調達してカヤックに積み補給なしが原則で、お風呂は、立ち寄る先で運良くあれば入ることもあるし、全く無い場合もある

よく行くね?
何を目指しているの?
危険じゃないの?
野生児だね
サバイバル!

ようするに、周囲は1週間もの休暇をわざわざカヤックを漕ぐ為だけに費やすなんて、なんてクレージなんだという印象を持つ。全くもって正常な反応だと思う。私が、カヤックに出会わなければ、同じように感じるだろう。

一体何が得られるのか?ショッピングもグルメもエステもなし。潮まみれ汗まみれになり日焼けし全身筋肉痛になる。行動を共にするメンバーは当日になってみないと分からない。修行である。だから、私は”海洋実習”だと説明する。

日本は周囲を海に囲まれた島国なのに、大多数の人は海について意識しない生活を送っている。私はたまたま瀬戸内に暮らしカヤックと出会い、カヤックを教えてくれる人が近くにいて、その魅力を知り海や気象や自然に興味が湧いた。

海や自然には多くの学びがあり、多くの気づきがあり、多くの成長の機会が与えられる。危険や死も常に意識する。

海や自然には人を引きつける魅力がある。圧倒的な美しさや、魂を浄化する癒やしがある。社会生活での悩み事など、なんてちっぽけなんだと想わせてくれる瞬間がある。しかし、時として想像もしない力で押し寄せる。人の無力さを見せつける。何もかも奪ってしまう。

普段は意識しない自然の中へ、カヤックという小さな乗り物を通じて非日常の7日間を体感する。それが瀬戸内カヤック横断隊で得られるすべての事である。

何を持ち帰るかは、人それぞれだろう。そして、それは簡単には言葉にならない。言葉で表現するにはあまりにも多くの事を経験するからだ。

横断隊は、期間中、途中離脱も途中合流もかまわない。隊に迷惑をかけない事が前提だが、あまり規則はない。唯一の課題はレポートを出すこと。レポートを出さない者は、次回の参加資格が無いという暗黙のルール。

正直私も、何を書いて良いやら見当もつかないが、唯一私だけが伝える事のできる内容といったら、初参加であるという事と女性であるという点からみる横断隊だろう。

横断隊は13次(年)を数えている。年齢も性別もキャリアもバラバラなメンバーが隊としてスタートしたら期間内にゴールする事を目的に集団行動をする。横断隊には明確な参加資格がない。これが、初めて参加する人をためらわせる。自分に参加資格が有るのか無いのか分からないからだ。もし、横断隊のスピードについて行けなかったらどうしよう。沈して迷惑をかけたらどうしよう。7日の野営で体調を崩したら・・・不安は尽きない。誰かが、大丈夫だよ!漕げるよ!とかは言ってくれない。むしろ、そんなんで300キロも漕げるんか?と迷惑がられるのが初参加者に向けられる眼差しだ。

漕力・判断力・装備・心構え・・・どれをとっても先輩隊士の足下には及ばない。どう考えても足手まといになるし、迷惑をかける。いやそもそも、迷惑をかけないというのが、所詮おごりであり横断隊の歴史の中で初参加者が先輩隊士に迷惑をかけることはきっと織り込み済みで、新入りが何をやらかしてくれるのか?ワクワクしているベテラン隊士もいるかもしれない。きっと先輩隊士の懐は広く、気持ちの上では寛容であるに違いない。そう考えると少し前向きに考えられるが、1度海に出ると誰も代わりには漕いでくれない事は変えようがなく、頼るべきは己のみ。自分の経験と嗅覚を信じるしかない。ちょっと、待って、信じるほどの経験なんてあっただろうか?やってみなくちゃ分からない。大丈夫か?わたし。

そんな葛藤を抱えた私が参加の唯一の基準にしたのは、自分で離隊できるか?という点だった。何が起きるか分からないから、誰も他人の面倒はみない。自分で自分の面倒を見れなければ、参加資格はない。横断隊はツアーではない。すべて自己責任。だから、何かの事情で漕ぎ進む事が出来なくなったときに、自分で離隊する判断が出来るか、また、離隊にあたり、今居る場所から1人で帰れるか、がクリアできないと参加してはいけないと思った。これさえクリアできれば、漕力に不安があっても、体力に不安あっても追い詰める事をしなくても良い。

無理をすれば必ず事故が起きる。個人の判断ミスが隊にとって最悪の状況を招いてしまう場合も考えられる。自分の判断でいつでも離隊出来ると思えるなら、横断隊への参加は可能だろう。

そしてもう1つ女性だということ。
毎年メンバーの大多数は男性。第13次は3名の女性参加者がいた。すでに第12次で完漕している隊士、ホクレアクルーのプロ航海士、そして私。正直彼女達がいてくれて凄く心強かった。あ、大体のカヤッカーは紳士だし女性に対して気遣いをしてくれる素敵な人達ばかりだと思う。なので、狼の群れに羊が…なんて事はないので、ご心配なく。

通常男性と女性では体力的な事はどうしてもハンデを負う。しかし、海に出れば自然は男女かなど考慮してくれない。同等に扱われる。嬉しくもあり、しんどさもある。体力勝負な7日間。男性隊士から”女子とは漕ぎたくない!”と言われない為に、体力に不安な女性にはそれなりの準備をお願いしたい。日が深まるにつれて、体力は消耗する。体はありえないくらい筋肉痛で手は豆がつぶれる。疲れが判断力を鈍らせ、視野を狭め、コミュニケーションを困難にさせる。

しかし、男性も同じように体力は消耗するし、手の豆もつぶれる。総じて海の上で女性だということがハンデになることはほとんどない。生理的な事は避けられない。事実、3人の女子はみんな"なった"が、自分の体を知っていれば、その対応も自ずと見えてくる。偉そうなことを言っている私は、準備不足でオタオタした。ちょうどサポートで来ていたコンパスのしのちゃんに救われた。問題は、いかに、自分の体を知らずに日常を送っているかだ。何を食べ何を飲み何をすれば体が喜ぶか、どうすればストレスなく漕ぎ続けられる体になるのか。陸にいる時にじっくりと向き合ってみると良いと思う。

漕ぐ事が息をするように当たり前になる頃、海と対峙しニコニコしながら漕ぐ先輩隊士、回りに常に気を配り、労をねぎらい、雰囲気が悪くならないように気を遣ってくださる先輩隊士、アメをくれたりムチをくれたりしながら隊を率いるリーダ隊士達の顔がやっと見えてくる。

どの日も常に回りの隊士に敬意を持って接する事ができたか?人となりを自身で反省する事は多い。

"行けば分かる"と言われた横断隊。これら海の上の体験が、その後の日常生活に良くも悪くも影響する。7日間の横断隊で見て、聞いて、体感した事は個人の深部に鎮座しいつまでも問いかけてくる。それが紛れもなく自分が海から持ち帰ったもの。季節が寒くなるころ、風が吹く頃、雨が降る頃、夜明けの頃、常に思い出す。

そして、何よりもカヤックが繋いでくれた出会いに感謝が尽きない。人間関係が希薄な社会生活の中、昨日会ったばかりの人達と寝食を共にし、同じ目標に向かって命を預け預かり生きる時間が果たしてあるだろうか。隊士だけではなく、行く先々で航海の無事を案じ、差し入れを振る舞って頂き、また、一夜の寝床や焚き火の許しを頂いた。こうやって支えて下さる理解者がいるからこそ、横断隊が7日間漕ぐことだけに集中できるのだと、あらためて感謝する。

"また、海の上で会いましょう!"そんな挨拶が交わされてそれぞれの海に帰っていく。それが横断隊の魅力だ。私は、そんな彼らとまた再会したいし、新しい隊士との出会いも楽しみにしている。

私が、初めてパドルを握ったのは2013年の6月。横断隊が2015年の11月。経験が浅くても行くと思い込めば、きっといろいろな人がいろいろな事を教えてくれる。このレポートが、いつか横断隊に参加したい人の背中を押しますように。心を込めて。

第十三次隊士 島津 裕子
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2003年第一次瀬戸内カヤック横断隊からの記録を掲載しています。

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